「Zoneを攻める」とは、一体何なのか?

スネル投手の言葉「ゾーンを攻める」とは何か?

2025年のPost Season、スネル投手が10月14日に言った言葉が話題となりました。

[英文記事] Blake Snellが好調の秘訣はGiants投手のLogan Webbの助言のおかげだと語る

スネルはサイヤング賞2回受賞で三振を多く奪えるが、スタミナが無い事が課題とされている投手でした。そこで、毎試合の様に7回まで投げているウェブからは
 「三振を取りすぎている。もっと(Strike)Zoneに投げ込め。そうすれば三振も取れるし、6回~8回まで投げられる」
と助言された、という内容です。

ウェブ投手が言う「もっとZoneへ投げ込め」とは、単にStrike Zoneの中へ投げ込むことではありません。

もしStrike Zoneの中央を目掛けて安易に投げれば、それは打者にとって最も打ち易く、強い打球を飛ばせます。したがって、投手が本当に狙うべきなのは、「Strike Zoneの中央ではなく、その近傍である」ということに他なりません。

つまり「Zoneを攻める」とは、
 「Strike Zoneの中心を避けながら、Strike Zoneの枠ぎりぎりやその周辺を使い、打者にとって判断が難しく強打しにくい領域を攻めること
と理解することができます。

次の章にて、MLB公式のStrike Zoneの定義と名称、及び周辺領域の名称について紹介します。

その後の章にて、今年から導入されたABS Challenge SystemによるStrike Zoneの実質的拡張の影響により、
 「Zoneを攻めることが今年からどのように変化したのか
を、図解による見える化にて分かり易く説明してみます。

Strike Zoneとその周辺領域

MLB公式 www.mlb.comのURLより、Strike Zoneの図を以下に示します。

Catcher Framing | Glossary | MLB.com

ストライクゾーン周辺は、大きく次の4つに分けて考えることができる。

Heart Zone

Heart Zoneは、Strike Zone中央の最も危険な領域(Dangerous Zone)である。
投手にとっては最も避けたい領域であり、打者にとっては最も強く打ちやすい領域である。

Shadow Zone

Shadow Zoneは、Strike Zoneの縁の周囲の領域、つまりStrike Zoneの内側1球分の幅から、Strike Zoneの外側1球分の幅までの範囲と定義される。
ここは、Strikeにもボールにも見えやすく、投手・捕手・打者の駆け引きが最も濃く現れる領域である。

Chase Zone

Chase Zoneは、Strike Zoneではない。その外側に存在する領域ですが、球種によっては打者が手を出し得る領域である。
つまり、変化球や速球の見え方によって、打者にスイングを誘うことができる。

Waste Zone

Waste Zoneは、明らかにボールであり、基本的には打者が手を出しにくい領域である。
カウント、配球、意図的な見せ球として使われることはあるが、常に狙うべき領域ではない。

ABS Challengeにより実質的に広がった攻めの領域

ABS Challengeの導入により、ルール上のStrike Zoneそのものが広がったわけではない。

Strike Zone | Glossary | MLB.com

しかし、ボールの一部がStrike Zoneに触れていればStrikeと判定されるため、従来なら球審によってボールとされていた境界球を、ABS ChallengeによってStrikeとして回収できるようになった訳です。

この意味で、投手と捕手が実戦上攻められる領域は広がったといえます。

大谷選手のStrike Zone

以下の図は大谷選手、つまり身長193cmの打者のStrike Zoneを、MLB公式の基準に従って私が作成したものです。

黒実線の四角形が、MLB公式のStrike Zoneであり、幅は一律で43.2cm、縦は打者の身長により異なり、大谷選手の場合は51.1cmとなります。

Shadow ZoneはHeart Zoneの約2.5倍

中央のピンク領域はHeart Zoneであり、投手にとって最も危険な領域Dangerous Zoneです。公式球(直径7.3cm)で表すと約19個分の領域となります。

その周囲の水色領域はShadow Zoneであり、内側の Inside Shadow Zone(公式球約21個分) と、外側の Outside Shadow Zone(公式球約28個分) に分けられます。

ABS Challenge時代には、とくにこの Outside Shadow Zone が実戦上Strikeとして回収されやすくなり、投手・捕手がZoneを攻められる領域は従来より広がりました。

概算すると、

 Shadow Zone / Heart Zone = 49個 / 19個 ≒ 2.58

つまり「Shadow ZoneはHeart Zoneの約2.5倍もある」のです。

思ったよりも

 「Strikeとなり得るZoneは広くなった。特に、Outside Shadow Zoneが広がった。」

と感じるのではないでしょうか?

しかしながら、Strike Zoneの定義そのものは、ABS時代であっても何ら変化していません。

昨年までのABS Challenge Systemが無い時代では、「審判の資質・判断能力に任せるのみ」でした。

しかし、今年より審判の判断を覆す事も可能となり、その結果、「審判の資質・判断能力が均質化、適正化されつつある状況となった」訳です。

まとめ

Zoneを攻める」とは、単にStrike Zoneへ投げ込むことではありません。


・特殊な場合を除いて、Heart Zoneへ投げることは避けるべき。
・Chase ZoneやWaste Zoneで攻める方針は、球数が増えて効率的とは言えない。


つまり、第1章の言葉をより本質的な表現とすると、
 「Heart Zoneを避けながら、Shadow Zoneを主戦場として、打者に振るか見逃すかの判断を強制すること」
である。

ABS Challengeの導入により、投手と捕手は、従来よりも境界領域を積極的に攻めやすくなりました。


その結果、投手と捕手の投球戦略は球種の選択以外に「どの領域を、どのように攻めるか」というZone設計の精度がより重要となる時代へと進化したのです。

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